魔法先生ネギま! SS作品 「友達」 ―さよ―

「はあー」
 相坂さよは夕方のコンビニ入り口でため息を吐いた。
 幽霊である彼女は六十年間、退屈な日々を繰り返してきた。
「夏休みは暇ですねー」
 誰に言うわけでもなく、呟く。
 彼女にとって夏休みもまた同じ日々。誰にも見えず、ただただひっそりとそこにいるだけだった。
 でも今は違う。
「今年は楽しく過ごせそうですけどね」
 クラスメイトの顔を思い出す。
「やっぱり暇だなー。クラスメイトの誰か来ないかなー……!!」
 ザジ・レイニーデイ。クラスメイトの一人で、さよの姿が見える数少ない一人だ。
「……」
 サジがさよを凝視する
「あ、あの、どうぞお座りになりますか?」
 その言葉にザジは首を縦に揺らす。
 ザジとその場に腰を下ろす。
なぞの生物が数体さよを囲んだ。
「あっ、あのー……」
 さよは、恐る恐る話しかけてみる。
 ザジは何処からとも無く、ペットボトルを数本出してから無言でさよのほうを向く。
「ひぃいい」
 急に出てきたペットボトルに驚くさよ。
 そんな姿を無視して、頭上にペットボトルを投げ、お手玉をするかのように簡単にペットボトルを回しだす。
「あっ、あのー……」
 再度声を掛けてみると、手はそのままで前方を直視していた視線だけをさよのほうに向けた。
「この方たちは一体?」
 さよとザジを囲む謎の生態のことを問う。
「…………友達」
「そっ、そうですか」
 さよの体に生態の手が触れる。
「ひゃ!」
 幽霊となって、触られることなどなかったさよにとって、誰か……何かに触れられるという経験はそうそうあることではない。
「…ニクありアルスカ?」
「なっ、ないですぅう!」
 足もないですうと半泣きで答える。
「…………気に入られた」
 前方に視線を戻しながらザジが囁く。
「食べてイイスカ?」
 肉がなくても食べたいらしい。
「ダメ」
 ザジが止めてくれた。
「うう、ザジしゃん」
 感涙が流れる。
 その時、カップルがコンビニに入る。
 ザジはその二人が過ぎると同時に立ち上がり、ペットボトルを一つずつ、コンビニのゴミ箱に入れていく。
「やめちゃうんですか?」
 さよが見上げながら言うと、ザジはこくりと頷いた。
「すごかったですぅ。また見せてくださいぃ」
「…………友達」
「えっ?」
 さよが聞き返すと、ザジは初め自分を指差してから、その指をさよに持っていく。
「……友達……だから……いつでも……」
 どうやら、自分達はもう友達。と言いたいらしい。
「……ザジしゃん」
 無いはずの胸中がジーンと熱くなったさよ。
 思えば六十年間、友達など一人もいなかったのに、今はこうやって自分を見てくれる人が居る。

 誰にも気がつかれず、地味な幽霊として『存在』してきた六十年間。ずっと話し相手がほしかった。
 私を見てくれる人。
 無口な人だけれど、私にも新しい友達が出来ました。
 


「朝倉さん! 危ないです!」
 朝倉が右手に持つのは勢い良く火花を飛ばす手持ち花火。
「大丈夫だって! さよちゃん幽霊だし」
 実体が無いことを良いことに、朝倉はさよの体めがけて花火を向けてくる。
 もちろん熱くは無いのだが、反射として体を宙に浮かせてその場から離れる。
「待て待てー」
 追いかけてくる朝倉。
「朝倉、何やってんの?」
 まき絵が不思議そうに朝倉の姿を目で追う。まき絵にはさよの姿は見えない。
「えへへ」と笑ってごまかす朝倉。
 朝倉の花火攻撃から逃れたさよは体を地上に近づける。
「ひゃ!」
 上体を火花がすり抜けた。慌てて火の起こるほうを確認する。
「…………」
 そこにはあらかじめさよがそこに来るのを予測していたかのように、サジが花火を構えていた。
「危ないですう」
 もう一度体を宙に浮かせる。
「む、上空に逃げたからといい、我が魔眼から逃れられると思うな」
 その場にいたクラスメイト龍宮がさよに向かって、ロケット花火を勢い良く投げつける。
「きゃー」
 花火がその体をすり抜けた。
「龍宮やりすぎ。さよちゃん怖がってるじゃん」
「何を言う、元はと言えば朝倉がはじめたのではないか」
「龍宮がやると花火も武器になっちゃうでしょ」
「火薬の量と術を施せば霊の一体ほどたわいも無い」
 
「…………いじめちゃダメ」
 ザジが龍宮を止めた。
「む、すまん」
 龍宮が複雑そうな顔で呟いた。

 さよは上空から三人を見下ろして、思わず顔が緩んだ。
 
 人に向けてはダメなんですけど、花火って楽しいで――
「ひゃあ!」
 上空を飛ぶさよの隣で花火が光った。

「今の綺麗だったねー」
 どうやらまき絵が飛ばした置き花火だったらしい。

 驚きながらも、さよはもう一度下を見下ろした。

 そこにいるクラスメイトは全員、上空を向き、花火を見上げている。


「なんか皆、私を見ているような気がしますね」

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category
SS
genre
アニメ・コミック
theme
魔法先生ネギま!

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